牛のお産 ―難産:陣痛微弱―

こんにちわ、ぱぐです。仕事復帰まで日がないよなーと思いながらも、なかなか日々に追われて復習に手が回りません・・・。

以前に、牛の正常なお産の振り返り記事をあげました↓↓

牛のお産 ー正常分娩についてーこの記事では、牛の正常なお産がどういったものなのか、その流れと子牛のポジショニングについて概要を理解できます。 参考文献は「ちょっと待って‼その分娩、本当に子牛の牽引が必要⁉―牛のお産正常・異常とその対処 デーリィ・ジャパン社」...

今回は、難産の中でも陣痛微弱についておさらいしていきます。

牛のお産における陣痛微弱

そもそも、陣痛とはどこから生じている痛みなのでしょうか。
陣痛は胎児を子宮の外に押し出すために子宮が収縮することで起きます。子宮の収縮が胎児と羊水の入った胎膜を徐々に外へ押し出し、子宮口を少しずつ押し広げていきます。胎膜で子宮口が押し広げられる刺激も痛みとして伝わります。

陣痛が弱い、というのはつまり言い換えると子宮の収縮が弱いということです。子宮の収縮が弱ければ、胎児を外へ押し出す力が弱いのでお産の経過が長くなります。分かりやすい時間の目安としては次の2点。

  • 一次破水(尿膜が破れる)後、1時間以上経過しても足胞が見られない。
    ⇒子宮捻転の可能性もあり。
  • 足胞が見られてから30分以上経過しても分娩が進まない。
    ⇒胎児の失位の可能性もあり。

陣痛がくれば、その痛みでお腹を蹴るような仕草や落ち着きなく立ったり寝たりを繰り返したりします。ただ、教科書的にそうは言っても、そのような素振りを見せても曖昧だったり陣痛間隔が長かったり、”陣痛が弱いかも”という判断は結果論にすぎません。実際のところ、牛のお産も人のお産も十人十色です。

陣痛微弱の原因

胎膜が子宮口を押し広げていくことで陣痛は促されます。つまり、破水によって子宮口に刺激を与えている胎膜が破れると(牛では2段階の破水があります)、刺激の元がなくなるために陣痛は一時的に弱まります。あくまで一時的ですが。生理的に起こるものなので、これに関しては避けようがありません。

子宮は”何”で構成されているでしょう?答えは、平滑筋です。子宮は筋肉なのです。筋収縮にはカルシウムイオンが非常に重要な役目を果たします。筋収縮とカルシウムイオンの関係性はだいぶ詳しい突っ込んだ話をする必要があるのでここでは割愛します。とにかく筋収縮にはカルシウムイオンが超重要とだけ覚えていてください。つまり、万が一カルシウムイオンが体内で不足している場合(低カルシウム血症など)、子宮筋の収縮に障害が起き、収縮は弱くなってしまうでしょう。

ほかにも、胎児の生死や胎位、母牛の衰弱具合、母牛のお産環境(落ち着いて横になれる広さの有無)など、陣痛は様々な要因に影響を受けます。

陣痛微弱への対処法と予防法

対処法は陰部に手を入れ、子宮頚管の緩み具合、直腸検査で胎児のポジション等諸々検査して総合的に判断する必要があります。子宮頚管が緩んでいないときに陣痛促進剤を使うわけにはいきませんし、反対に、子宮頚管が全開の状態で子宮頚管弛緩剤を使っても全く意味がありません。

予防法としては、まずわざわざ人為的に胎膜を破って破水させないということです。必要なタイミングで破水は自然と起こります。状態を確認するために手を陰部に挿入する際にも、丁寧に触れるよう注意を払えば、そう簡単には胎膜は破れません。

また、間接的ではありますが、落ち着いてお産に臨める環境を整えることも重要です。人のお産でも、不安や恐怖といった精神的ストレスは陣痛の妨げになります。落ち着いた気持ちでお産に臨むためには周りのサポートが必要不可欠です。具体的に言えば、お産間近の牛は分娩用の広いスペース(目安は4.5㎡/頭)に移し、床敷を厚くして足腰への負担をできる限り抑えるよう準備した方がいいでしょう。敷料は各農場で様々ですが、ポイントは ①滑りにくく かつ ②クッション性がある ことです。産前産後はリラキシンというホルモンの作用で骨盤の靭帯が緩くなります。産後、フラフラの母牛が水を飲みに行こうとして滑って転んで起立不能・・・という残念な事態にならないようにするためにも、分娩房の寝床には特に気を遣った方がいいでしょう。

参考文献

『ちょっと待って‼その分娩、本当に子牛の牽引が必要⁉―牛のお産正常・異常とその対処』デーリィ・ジャパン社

現場で走り回る牛獣医の多くが直面する「いやーこれ待って大丈夫なやつだと思うけどな~」なお産。ただ、あてが外れることがあるのも事実です。

改めて自分が扱うお産を振り返る機会になりました。

ABOUT ME
ぱぐ
30代会社員。現在2児の母。趣味は高配当株メンテ・探し、日本舞踊、油絵。リベ大のYoutube動画にハマってお金の勉強中。苦手なことは料理。